「テイル」の習得に関する横断研究
日本語の「テイル」にはいくつかの機能があります。
「木が倒れている。」 「弟はテレビを見ている。」 上の二つの文は両方とも「テイル」を使っていますが、前者が【結果の状態】を表しているのに対して、後者は【動作の持続】を表しています。 一つの文法的要素がいくつかの機能を持っているのは特に珍しいわけではなく、英語の「テイル」に匹敵する“-ing“にも,いくつか違う意味があります。 I’m leaving for Japan in three days. He is watching TV. He is practicing the medicine. 上の三つの文はそれぞれ同じ“―ing”を使っているにもかかわらず、上から【確定した予定】、【動作の持続】、【習慣・繰り返し】,と異なる意味を伝えています。 では、日本語にはいくつの違った「テイル」があるのでしょうか? またこれらの異なる「テイル」の機能の使用は学習者にとって、どれが簡単で、どれが難しいのでしょうか? 許(1997)は、日本語中上級レベルの台湾人の「テイル」の習得状況を「絵を用いたオーラルプロダクション」と「文法テスト」をつかって調査しました。 調査の方法は、「テイル」の機能を【経歴・経験】、【反実仮想】、【結果の状態】、【動作の持続】、【習慣・繰り返し】、【形容詞的】、【慣用方】、【所属・職業】に分類し、その正用率を計ることによって行われました。 その結果を使い,習得難易度を判定しました。 その結果、学習者にとって最も簡単な「テイル」の使用法は【形容詞的】、【慣用方】、【所属・職業】などの限られた特殊な用法と分かりました。 【形容詞的】用法とは、「あの人は私のお母さんに似ている」などに使われる「ている」、【慣用方】は「コンピューターを三台持っている」の「ている」、【所属・職業】は「彼は先制をしている」などの「ている」です。 これらの用法は、一緒に使われる動詞が限られており、学習者は動詞とのセットで覚えることにより比較的簡単にマスターできるようです。 次に簡単な用法は【習慣・繰り返し】の用法で、「彼は毎日ジョギングをしている」などに使われる用法です。 その他には、【動作の持続】、【結果の状態】、【反実仮想】と続き、最も難しい用法は【経歴・経験】と分かりました。 【反実仮想】とは「あの交通事故で死んでいたら」など、現実に起こらないことを表す時に使われる用法で、【経歴・経験】は「ボクは中国に三回行っている」など、経験を表す時に使われます。 ((難しい)) 【経歴・経験】 【反実仮想】 【結果の状態】 【動作の持続】 【習慣・繰り返し】 【形容詞的】 【慣用方】 【所属・職業】 ((簡単)) またこの他に、中国語からの影響とおもわれる「テイル」の使用法も観察されました。 中国語には「著」という【動作の持続】を表すアスペクト助詞が存在します。 「車停著」 =車が停まっている などのように使われ、日本語の「テイル」と同じように使われます。 その結果、中国語話者である台湾人日本語学習者は中国語で「著」が使われる動詞に関しては適切に「テイル」を【動作の持続】として使うことができます。 一方、「花が咲いている」などの文は中国語では「著」のかわりに、「了」という完了のアスペクト助詞を使うため、日本文で「花がさいた」という「した」という完了のアスペクトをかわりに使ってしまう傾向があります。 このように、母語である中国語からの転移も「テイル」の習得に影響していることが分かります。 今後の、研究として中国語以外を母語とする学習者の習得研究が興味があるところです
許 夏珮,1997,中·上級台湾人日本語学習者による「テイル」の習得に関する横断研究,日本語教育95号,37−48
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