日本語学習者のモダリティ表現

 

 

日本語を外国語として話す人の作文と日本人の書く作文の違いは何でしょうか? 佐々木・川口(1994)は日本語学習者の作文と日本人による作文を比べ面白い報告をしています。 

 

報告によると、日本語学習者はモダリティ表現の使用が日本人と比べると少ないそうです。 モダリティ表現とは話している内容に対する話者の感じ方や態度を表す表現をさします。

 

益岡(1991)によると、日本語の文は、命題とモダリティからなる、重層構造をもっています。

 

シアトルは雨が降る らしい

 

上の文の重要な情報は「シアトルは雨が降る」という命題によって表現されています。 さらに、「らしい」というモダリティが命題に対する話者の態度や関係を付け足しています。

 

佐々木・川口は、このモダリティ表現が日本語母語話者と学習者との間でどのように,違った使われ方をするのかという事に注目し、日本語母語話者と学習者の作文を分析しました。

 

学習者の日本語のレベルは中上級レベルで、日本に1年以上住んでいる人が対象でした。また、日本人に関しては小学1年生から大学生まで、各学年ごとに調査を行いました。 

 

分析の結果、2グループ間での大きな違いは、日本人大学生と比べると学習者はモダリティ表現の使い方が少ないことが分かりました。 この学習者のモダリティの使用率は、日本語話者の小学5,6年生に匹敵します。

 

日本語母語話者に関してもモダリティ表現は学年が上がるに従って、使用率が上がり、小学低学年では30%ほどの使用率が大学生になると60%ぐらいになります。

 

また、学習者のモダリティの内訳に関しては、「のだ」、「わけだ」などの説明のモダリティ、「かもしれない」、「そうだ」、「ようだ」などの真偽判断のモダリティの使用率が日本語母語話者と比べて低くなっています。

 

他には,同じ「だろう」、「と思う」などの主観的モダリティは「ようだ」、「かもしれない」などの客観的モダリティよりも多く使用されており、主観的モダリティは客観的モダリティよりも先に習得されると考えられます。

 

さらに、日本語話者のモダリティ使用率の内わけと学習者の内わけを比べることにより、学習者のモダリティ習得は日本語話者の習得順序と似ていることも分かりました。 

 

この研究により、日本語話者と学習者の作文における違いの一つにモダリティ使用があきらかにあること、モダリティ表現習得過程は日本語母語話者の過程に似ているということが分かりました。 今後は、学習者の会話におけるモダリティ表現の使用状況などの調査が必要と思えます。

 

佐々木泰子・川口良,1994,日本人小学生・中学生・高校生・大学生と日本語学習者の作文における文末表現の発達過程に関する一考察, 日本語教育,84号 

 

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