助詞の使用

 

 

日本語を学ぶ外国人にとって,最も難しいもの一つに助詞の使い方があります。 少し中学校の国語の復習になりますが,助詞とは簡単に言うと「てにをは」と呼ばれる。 「花子学校行った」に使われる「」や「」などをさします。 この他にも,「が」,「を」などがあり,前にある名詞と後に来る動詞との関係を表します。 

 

実は,日ごろ何気なく使っているこの助詞の使い方が日本語を学ぶ外国人を,一生悩ませます。 それはちょうど,英語を学ぶ日本人が冠詞の "the" や "a" の使い方を一生かかってもなかなかマスターできないのに似ています。

 

助詞の習得に関してはその代表的な問題として,「は」と「が」の使い分けがあります。 このふたつの助詞は,日本語を外国語として学ぶ人々だけではなく,国文法学者の間でも古くから問題になっています。 それだけに,日本語学習者にとってもマスターするのが非常に難しいのです。

 

八木(1996, 1998)によると学習者にとって,「は」の使用法の方が習得が「が」と比べて早いと報告されています。 これは日本語に限らず,言語を学ぶ上で主語を使った文の表現よりも,主題を使った文の表現の方が先に習得されると言う,主題の普遍的卓越によるものです。 

 

言語学者の中では,「は」というものは文の中で主題を表すものと考えられていて,「が」というのは主語を表すものと考えられています。 そして,日本語を学ぶ人が,先に「は」をうまく使えるようになるのは,どの言葉を母語と話す人でも同じということです。 そしてそれは,人間のもの考え方に由来しているということです。  

 

はたして,その通りなのでしょうか。 本当に誰もが「は」を「が」よりも先に使うようになるのでしょうか。

 

ここで判例をあげると,日本語を母語として話す子供たちの「が」と「は」の使い分けは「が」の習得の方が早いということが分かっています。 (Nakamura, 1990) 

したがって,必ずしも日本語学習者が「は」を先に学ぶということは主題の普遍的卓越性のためとは言えないと思われます。

 

言語を初めて習い始める日本人の子供の「が」と「は」の習得結果は,すでに言語というものを使えた上で外国語を習い始める学習者の習得の仕方とは基本的にちがうのかもしれません。 学習者による主題の普遍的卓越性は,第2言語習得という範囲に限られているのかもしれません。

 

また,主題と主語の観念自体の習得とそれを表す「は」や「が」という格助詞の使い方の習得は必ずしも一致しないのかもしれません。 事実「は」と「が」には主題や主語を表す以外の働きもあります。

 

 この問題には,更なる研究が必要と思われます。

 

八木公子, 1996, 初級学習者の作文にみられる日本語の助詞の正用順序 −助詞別,助詞の機能別, 機能グループ別に−, 世界の日本語教育, 6,65−

 

八木公子,1998,中間言語における主題の普遍的卓越 −「は」と「が」の習得研究からの考察−,第二言語としての日本語の習得研究,2,57−67

 

Nakamura, Kei, 1990, Referential Structure in Japanese Children's Narratives: The Acquisition of wa and ga, Japanese/Korean Linguistics, vol. 3, 84-99

 

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