主題の表し方

 

主題ってなんでしょう? 主語とは違うんですか? まずは主題と主語の違いから話していきましょう。

 

英語を習ったときに,"I am a boy" の "I" は 主語だって習ったのを憶えてますか? 英語文法に関する「主語」と言う言葉は,基本的には動詞との結びつきを表します。 動詞の前にきて,その名詞の種類によって動詞が変化する( like -> likes) 名詞を主語と呼びます。 一方動詞の後ろにきてその動作の対象になる部分を目的語と言います。

 

したがって,主語と言う言葉は文法に基づいた,動詞との関係を表す専門用語です。 

 

主語は必ずしも人とか動物とか動作をする存在である必要はありません。 それは,「主語」と言う言葉がもともと文法関係を表す言葉だからです。 したがって,名詞の「意味」は,それが主語であることに影響しません。 どんな意味の名詞でも動詞が変化をおこす位置にあるのなら,主語になります。 しかし,実際の会話の中で主語にあたるものは多くの場合,動作をする「主体」であるため「主語」=「主体」と言った間違った考えに成りがちです。

 

「主体」とは「主語」とは異なり,動作をする動作主です。 したがって,"I like you." の "I" は"like" の主語であると同時に主体でもあります。

 

さて,それでは本題の「主題」とは何なんでしょう。 「主題」とは簡単に言うと,会話をしている最中のテーマです。 何について話しているかと言うことです。

 

この三つがごちゃごちゃに成るのは,三つともレベルの違うカテゴリーだからなのです。 主語は文法レベル,主体は意味レベル,主題は会話レベルの言語学における専門用語です。 とくに日本語ではこの三つが同時に一つの単語に起こりえます。 

 

「太郎君いる? 太郎は今ご飯を食べているのよ」

この文の「太郎」は「主語」「主体」「主題」,全てをかねています。

 

そんなわけで,主題とは会話におけるテーマであり,一般に,会話をしている2人はうまくこのテーマを前の発話に関連させて同じ主題について話したり,新しい主題を持ってきたりして会話をしています。

 

では,日本語を話している日本人が英語を話すとき,はたしてこの人は英語を話すアメリカ人と同じ主題の表し方をするのでしょうか,それとも英語を使いつつも日本語に近い感覚で話しているのでしょうか?

 

Sasaki (1997) によると,日本人の話す英語にはアメリカ人の話す英語に近い主題の表し方をするところもあれば,日本語のような表し方をするところもあるとの事です。

 

具体的には,主語に来る名詞の使い方は日本語よりも英語に近い用法になります。 日本語における主語は実際の会話中には省略という形を最も好みます。 「私はこの音楽嫌い」と言うより「この音楽嫌い」のように主語を省略します。 一方英語は多くの場合,主語を省略できません。 そんな英語と日本語の違いにもかかわらず,日本語英語に主語を省略する傾向は無いようです。

 

違いが出るのは,主語における用法ではなく,述語における用法です。 英語のネイティブスピーカーにとって,目的語に最も多い名詞は代名詞です。 "him", "her", "it", "that", "this", "them" などの単語が,"apples", "people", "water" などの名詞よりも頻繁に使われます。

 

一方日本語はその逆で,名詞の方が代名詞よりも目的語として,よく使われます。 そして,日本語英語の目的語には,名詞使用率が代名詞使用率よりも高くなる傾向があります。 これは英語よりも日本語に近い用法と言えます。

 

またこの他以外にも Sasaki によると,日本人英語の特徴として,"they","he","she" などの代名詞を,それを指示する名詞が発話されなかったのに,使われる傾向があるとのことです。 

 

これは僕自身も経験があり,日ごろよく使っています。 自分でもまえに,どの人と詳しく言ってないのに,分かるだろうと思って"they"などと,突然言ってしまいます。 日本語だったら主語なしで,済ますところを無理やり,"they" とかをいれてしまいます。

 

さらに Sasaki によると,日本人英語の新しい話題の表し方は,まず新しい名詞を動詞の目的語として導入して,その後の発話で,主語の位置で,代名詞としてこの単語を指し示していきます。 そして,これは日本語からのTransfer と考えられます。

 

この Sasaki による考察はなかなか鋭いものがあり,実際に僕自身もよくこのパターンを使って英語を話していると思います。 新しい言葉を文頭にもってくるのは,なかなか難しく,とりあえず主語を代名詞でごまかして,目的語のところまで時間稼ぎみたいなところがあると思います。 さらに彼女の発見としては,そんな代名詞の導入を可能にするのはその代名詞が出てくる前に,場所をはっきり定義するとの事です。

 

I went to the work late yesterday, and they told me to come on time.

 

などのように,to the work で 場所を定義したあと,"they 〜" と,まえに "they"  が何を示しているかはっきり言ってないのに "they" と言い始めちゃったりします。 

 

そんな日本語英語,なんとなく気づいていたけど,面白いですね。 まあ,ぜんぜん意味は通じるから, もう今さら,直そうとはなかなか決心できそうも無いんですが。

 

 

Sasaki, Miyuki, 1997, Topic continuity in Japanese-English interlanguage, International review of applied linguistics in language teaching., 35, 1, 1-21

 

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